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世間さま ④〈完結〉 智(とも) 部屋のすみにいる生き物に、抑揚(よくよう)のない口調で夫が話しかける。きみは、あたまの煙突から、いったい何を出しているんだい。よかったら、教えてくれるかい。 これ、デスか? 一瞬、息が止まった。部屋のすみへ視線を振った。四角い生き物が答えていた。その声を、初めて聞いた。男のような、女のような、人工的に作り出されたようでもある、とらえどころのない声だった。 べつにた…
ミュージシャンになる、という夢を抱いて都会へ出てから10年。夢に見切りをつけて故郷へ帰って来た。懐かしい我が家には埃が積もり、年月の流れを感じたのだった。掃除をして、様々な思い出の品を見つけ、この家から再スタートを切る決心をする。そして都会暮らしをしていた自分を思い出すと、奇妙な事実に行きつくのだった。 1 故郷の駅へ近づくと、田園風景が広がっている。 ローカル線の、ガタンゴトンというリズムが身体…
最初から書き直しちゃおう。全然できてないから。 今出してる話も消しちゃう。
「いらっしゃいませ~!」 早起きが得意な人が来店する朝。来店と同時に吹き込んできた空気は気持ちの良い暖かさ。 よかった……今日もいつもと変わらず清々しい。 「おはようございます。今日は何になさいますか?」 私はいつもの奥の席に腰を下ろした白髪のおじいさんの元へと愛想よく駆け寄った。 「おはよう。じゃあ、いつもので」 おじいさんは顔のしわを伸ばしてにこやかに微笑んだ。 「はい。かしこまりました」 そ…