ジャンル問わず小説を書いている人のブロググループです
はてなブログを持っていれば、誰でも参加できます。
「ちい子、明日はおじさん家の仕事に行くの。朝が早いので、もう寝てね」 お母さんは少しイライラしています。 ちい子は布団に入りました。ミーコもいっしょです。 居間にいるお母さんを呼びました。「ねえ、お母さん、絵本を読んで」 「さっき、言ったでしょう。朝が早いんだから、寝なさい」 お母さんは枕もとの明かりをつけ、入口の電気を消して足早に出ていきました。 「どうしたのかな。ちい子 何かいけないことをした…
いつもの通り道。自宅から駅へ向かう一本道の途中に、中古バイク屋がある。通勤前の眠い目で前を通り過ぎるたびに、店先に並ぶスクーターの影が視界をかすめる。けれど、これまで足を止めたことはなかった。 ところが、その日は違った。店先に貼られた一枚の写真に、思わず目が吸い寄せられたのだ。 夏の江の島。陽にきらめく海と、白く盛り上がった雲。そして写真の下に添えられた短いコピー。 「あなたも、自分だけの足で旅に…
1. 遭遇 ― 白い紙の衝撃 初詣。 人混み。 屋台の焼きそば。 鼻毛にからみつく線香の煙。 僕は神社でおみくじを引いた。 ガラガラガラガラ。 カラン。 白い紙が出た。 ……真っ白。 「え、これ……印刷ミス?」 と思った瞬間、巫女さんが囁いた。 「それは、あなた自身で書き込む運命です」 うわなにこのRPGみたいな設定。 テンション爆上がり。 僕はペンを取り出し、白紙に書き込んだ。 「大吉!金運爆上…
〈第一話 静雨譚〉 雨は、降り続いていた。 それは濡れない雨。 雲の縫い目から零れ落ちるような細い粒子は、掌に受けても水滴にはならず、ただ微かに肌をくすぐって消えていく。 この雨が降り始めてから、季節は変わらなくなった。冬は遠のき、夏も来ない。街は、同じ温度と光の中で緩やかに時間を繰り返している。 世界の人口は半分になった。 消えたのか、去ったのか、それともどこかへ移されたのか──誰も知らない。た…
それは夏の午後のことでした。 風も無く空はすっきりと晴れており、動物園の園内はギラつく太陽に炙られて、干上がるような暑さです。 巨きな体で人気の象さんも、百獣の王ライオンさんも、スーパーモデルのようなスタイルを誇るキリンさんも、猿山にたむろす猿さんも、いささか暑さにぐったりとしています。もともと暑い国を故郷にしている彼らですが、だからといって日本の暑さが全然平気というわけでもないのでした。 もちろ…
ご無沙汰致しております。 春から仕事の畑がガラッと変わり、距離感と捉え方がよくわからなくなり、何やら迷走中の筆者です。やりたいことは何だっけ、しかしこれがやらないといけないことにいつの間にかすり替わり、遠い向こうをみていたはずなのに目の前に焦点が合っている。我武者羅に、の年齢は最早通り越していて、駆け出しの頃の憧れってあったかな、と忘却曲線が跳ね上がっている。今はそんなことを思いながら人生のオーバ…
第一章 「水無瀬晶の弟」 俺の姉について話しておきたい。 水無瀬晶は厭なやつだ。無神経で傍若無人でニコリとも笑わない。性悪な女だ。 姉といっても、血は繋がっちゃいないんだけど。ただうちの母親とあいつの父親が結婚しただけ。よくある話だ。晶と俺とは血が繋がっていない。ーーーそれを俺は喜ぶべきなのかもしれない。あんなに生きづらそうにしてる義姉を見ていると余計に。厄介な性質を、もしも俺も受け継いでいたらと…
先週の日曜も予定があって更新できませんでした。本当にすみません🙇 また、申し訳ないことに、8月17日も部活の合宿で更新できません。 毎週更新できず、申し訳ないです。 後、連絡として更新は毎週日曜午後1時変更しました! 次回は「紅き選定者」の第一話を公開する予定です!! 後、今、将棋にハマっているので、それについての記事も今度書きたいと思います。 お楽しみに!!
ルーティーンは大切だと、いつか聞いたことはある。たぶん二十歳そこそこの頃だろう。「何事も継続が大事だよ」と、学校では教わった。あれから三十年以上が経った。世の中は様変わり。とてもじゃないが僕のチンケな頭では想像できない、理解できない複雑な構造をした便利なモノが現代には溢れかえっている。 アラームは六時よりだいぶん前の四時半にセットされている。夏なのでその時間には外は明るくなり始めている。気温は30…
第5話:貸金庫番号491番 第5話_相続で知る夫の正体 東京帝都銀行本店営業部の貸金庫室前。地下の重い空気を切り裂くように、内線電話のベルが鳴った。笹倉は受話器を取り、静かに頷く。「相続口座の手続きはすべて完了しました。これから貸金庫の開扉に入ります。相続人の岩崎寛子様がお見えです」──窓口担当の声。 笹倉は、書類の束を手に立ち上がった。遺産分割協議書、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、委任状………
次のページ