詩、和歌、エッセイ、歌詞、小説などなど、言葉を紡ぐ人たちのグループです。 作品投稿・交流用スペース → http://space.hatena.ne.jp/~/14217943783081207203
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第四話 徳島出張編 羅麺メンマは、徳島駅前のビジネスホテルにチェックインするや否や、荷物を部屋に放り込み、すぐさま外へ飛び出した。移動日の夜は、彼にとって“ご当地ラーメン探索”の時間だ。スマートフォンで検索すると、評価の高い店が一軒、駅から少し離れた路地裏にあるとわかった。迷うことなく、彼はその店へ向かった。 暖簾をくぐると、店内は湯気と甘辛い香りに満ちていた。カウンター席は常連客でほぼ埋まり、皆…
アクアマリンを握って眠ることもない夜 本当は大人ぶりすぎて引き際を外しただけの子供 書けない私のまま君に会いに行く 夜が西に去っていく時分 失われる時間 さっきまで夢を見ていた 陳腐で浅はかな宝石にだまされていた 夢を忘れた私のままで 君に会いに行く 夢を忘れた君と私で 形骸化した万華鏡を交換する 筒の中にしか もうない
小雨だ。 空は泣くほどでもなく、笑うほどでもない。 それでも地面は、確かに暗い色に変わりはじめている。 人の足取りは、途端に速くなる。 濡れているわけでもないのに、 濡れる未来を避けるように、人は急ぐ。 まだ何も起きていないうちから、 起きるかもしれない不快を先回りして嫌うのが、 人間らしい。 傘を三本も持って歩く人。 一本しかないのに、使わない人。 畳んだまま振り回す人もいれば、 さした瞬間から…
私は常に腹が痛い。 ノックせずに入ってくる友人だ。「昨日の食事の際はどうも。」と要件を言ってくるわけでもない。要するに、治しようがないのである。 そんな中、迎える彼氏とのデート。乙女のプライドとして、腹痛は許せぬ。そしてデートは始まった。 彼氏は来たが、例の友人は来なかったのである。実のこと、昨日おまじないをかけておいた。私は小さくガッツポーズをした。そして横を見てみると、彼が腹を抱えて苦しそうに…
店を出ると、神戸の夕暮れは思いのほか早かった。 六甲の山並みに太陽が隠れ、空は深い群青色からオレンジ色のグラデーションに染まっている。 手元に残った2万5,690円。 かつての「俺」を支えてくれたキャラクターグッズたちが、今の「俺」の生活費へと姿を変えた。少しの寂しさはあるが、それ以上に、空になったキャリーワゴンの軽さが、今の自分には心地よかった。 駐車場に停めた年季の入った四駆に乗り込み、俺は市…
診断名は一度きりではなかった。 これまでも、いくつかの名前で説明されてきた。 統合失調症と言われた時期もあれば、双極性障害。 そして複雑性PTSDとして過ごした時間もある。以前の医師からは、過去には解離性同一症の状態があったが、 現在は自己完治しているのではないか、という説明を受けていた。けれど今、新しい医師とともに 解離の在り方そのものを見直している。新しい病名がついたというより、 以前からあっ…
一月の神楽坂は、冷たい風が石畳の坂を舐めるように吹き上がっていた。 坂の途中で、柏木遼は立ち止まった。午後二時。本来ならオフィスにいるはずの時間だ。だが今日、彼は初めて午後休を取った。理由は自分でもよくわからなかった。 三十二歳。インターネット広告代理店で営業職に就いて八年目。成績は悪くない。クライアントとの関係も良好だと思う。少なくとも数字の上では。けれど最近、自分が発する言葉のひとつひとつが、…
『眠れぬ夜はケーキを焼いて』という作品がある。イラストエッセイストの午後さんという方の作品だ。著者の生活を切り取ったマンガ形式のイラストエッセイと共に、著者のレシピが掲載される。題名の通り、お菓子を作っていることが多い。 お菓子作りって、余裕のあるマダムがやっているイメージがあった。だってスーパーに行けば、味は劣るかもしれないが、似たようなお菓子がものの数分でたった数百円で買えるのだ。 エッセイを…
blog.hatena.ne.jp 私は、その心の闇を考えないように、毎日を過ごしていた。いなくなった胎児の水子供養も、彼と一緒にお寺で行った。 それでも、思い出せば涙があふれた。抑え込んだつもりでも、心は正直だった。 私は、心の奥に巣食う疑心や不安に目を向けないように、ただ、目の前の一日をやり過ごすことに必死だった。 そんな日々の中で迎えた、49歳の誕生日。彼は、2度目のプロポーズをしてくれた。…
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